国産蝶類標本写真館

タイワンツバメシジミ 

Everes lacturnus

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鹿児島県産 ♂表面
鹿児島県産 ♂裏面
鹿児島県産 ♀表面
鹿児島県産 ♀裏面
 
分布:本州(和歌山県南部)、四国(高知県、愛媛県)、九州、種子島、屋久島、沖永良部島、徳之島、奄美大島、沖縄本島北部。

生態:通常は年1回発生し、産地によっては年2〜3回発生し、8月下旬から10月上旬に見られる。沖縄本島では5月下旬から11月上旬に見られる。成虫は海岸近くの樹林周辺、日当たりの良い路傍、荒地の草地など、食草の群落の近くで見られる。緩やかに飛翔し、シバハギなどの花で吸蜜し、♂は湿地で吸水する。越冬態は幼虫で、地上の落ち葉の下などで越冬する。奄美大島、沖縄本島産は小型で裏面は暗色で斑紋は小さいため別亜種とされる。

食草:マメ科のシバハギ、タチシバハギの主に花、蕾、若い果実を食べる。

 低地から低山地の草原や林縁に分布するが、発生はかなり局所的。ツバメシジミとよく似た種だが、ツバメシジミより小型で、後翅裏面肛角部の赤橙色紋がより大きく目立つ。
 初秋に成虫が現れ、孵化した幼虫はシバハギの花、蕾、若い果実を食べ、老熟した幼虫はススキのなどの植物の根元付近の枯葉の隙間で静止し、冬から翌年の夏までそのまま休眠状態で過ごした後、蛹化して花の時期に羽化するという特異な出現パターンを持っている。沖縄本島では初夏にも花が咲くタイプのシバハギがあり、そのために年2化になるようだ。

 ツバメシジミと大して変わらない種だが、タイワンツバメシジミは衰退の一途。沖縄ではすでに絶滅してしまった。現在では九州と周辺の島嶼で局地的に見られるだけになってしまった。特異な生態のため、草刈や野焼きの影響を大きく受けてしまうようだ。
 今から30年以上前、8月の1月間九州各地を旅行した。8月の下旬になりタイワンツバメシジミを探してみようと思い立ち、いくつかの産地を回ってみた。残念ながら時期がほんの少し合わなかった様で、見られたのは普通のツバメシジミだけだった。それから約20年たったころ、9月に九州に行く機会があった。鹿児島の産地に行ってみたがそのときは多くのタイワンツバメシジミが見られた。ツバメシジミとたいして変わらない蝶だが、簡単に見られないと思うと高級っぽく見えてくるのは不思議なものだ。