国産蝶類標本写真館

ヒョウモンモドキ 

Melitaea scotosia

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長野県産 表面
長野県産 裏面
広島県産♂ 表面
広島県産♂ 裏面
広島県産♀ 表面
広島県産♀ 裏面
広島県産♀ 黒化型 表面
 
分布:本州。東北地方(福島県)、関東地方(群馬県、茨城県、千葉県)、中部地方(富山県、長野県、岐阜県、愛知県、山梨県)、近畿地方(兵庫県)、中国地方(島根県を除く各県)。現在は中国地方以外では絶滅。

生態:年1回の発生で、6月上旬に現れる。標高が高い地域では7月中旬に現れる。成虫は湿性草原の周辺に好んで生息し、飛翔は比較的敏速で、各種の花で吸蜜する。幼虫は孵化から翌年の春まで集団ですごす。東北地方から中部地方の個体は、中国地方の個体と比べると小型。

食草:キク科のキセルアザミ、タムラソウ、ノアザミ、サワアザミなど。

 以前は東北地方から中国地方まで分布していたが、現在でも棲息しているのは広島県のみ。
 草原を生活の場とするヒョウモンモドキは、草原の少ない日本では以前から分布が局所的だった。福島県や茨城県の記録が残るのは1960年代から70年代までのようで、東海地方のヒョウモンモドキも同じ時期にいなくなってしまったようだ。
 そのころ本州中部の高原地帯ではまだ生息地は多かったが、このような草原環境は開発され、生息地の多くは消失していった。かつて多産地として知られていた本州中部の各産地でも、1980年代を最後に見られなくなってしまった。
 最後に残った中国地方の生息地でも絶滅した産地が多く、生き残っている個体群も他の草原性の昆虫と同じように絶滅に瀕している。生活環境が変わり、以前のような環境が維持できなくなっている現在では、管理下の人工増殖が必要だろう。

 種の保存法「国内希少野生動植物種」によって指定され、2011年4月1日より施行された。これにより生きている個体ついては、捕獲等(捕獲、採取、殺傷、損傷)が原則として禁止、過去に採集された標本についても販売・頒布目的の陳列と、譲渡等(あげる、売る、貸す、もらう、買う、借りる)は原則として禁止されている。採集禁止は当然としても、採集禁止になる前の標本についても、売買、譲渡等が禁止されているので十分注意が必要だ。日本の蝶で指定されているのはこの種だけ。それだけ危機的な状況と言うことだ。