国産蝶類標本写真館

ウスイロヒョウモンモドキ 

Melitaea diamina

戻る

島根県産♂ 表面
島根県産♂ 裏面
島根県産♀ 表面
島根県産♀ 裏面
 
分布:本州(近畿地方西部から中国地方中部から東部)。

生態:年1回の発生で、6月中旬に現れる。標高が高い地域では7月中旬に現れる。成虫は火山性の乾性草原や湿原の周辺、田畑の周辺に生息し、草上を緩やかに飛翔し各種の花で吸蜜する。幼虫は孵化から翌年の春まで集団ですごす。

食草:カノコソウ。標高が高い地域ではオミナエシ、オトコエシ。生息地以外のオミナエシは食べないことが多い。

 現在では生息地のほぼ全域で地域を定めて指定された採集禁止種となっている。
 本来の生息地は火山性の乾性草原や湿性草原。現在では生息地はきわめて狭くなってしまい、人間が草を刈って維持している草原しか見ることができない。一度は絶滅しかかった種だが、各地で生息地の植生の復活など保護活動が行なわれ、最近は徐々に数が増え始めている。今後もこの種が生き延びていくためには、人の手で増殖することと、生息地の草地を維持する必要がある。
 草原という環境は変遷が激しい場所で、安定して草原の環境が維持される環境ではない。古来から里山では人々が雑木を切って炭を焼き、落ち葉を集めて堆肥を作り、田畑の肥料としてきた。刈り取った草は牛馬のエサや敷きわらとして利用する、自然環境を大切にする循環型生活を営んできた。しかし近年では生活環境の変化や過疎化、高齢化に伴う人手不足で放置される田畑が増えるとともに、今まで維持されてきた採草地や牧草地が減り、さらに効率化の基に間違った使用がされてきた農薬の大量散布などにより、周辺の環境も悪化してしまった。その結果、ウスイロヒョウモンモドキの食草であるカノコソウやオミナエシも減少し、彼らが住める環境がなくなってきている。人為的な草原管理がなされなくなる中で人がかかわらないと生きていけないこの種はどうなっていくのだろうか。