スジブトヒラタクワガタ
Dorcus metacostatus
奄美群島のみに分布する種で、♂♀とも上翅に深い縦スジがある。
生息地では普通に見られる種だが、大型の個体は少ない。40mm台までの個体が多いが、大型の個体で70mm程度になる。活動期には樹液や熟果に集まるが、地上近くの樹液に多い。
同じ地域生息するアマミヒラタクワガタやトクノシマヒラタクワガタと混生しているが、サイズは小さめの個体が多いためか、いい場所は占有されてしまうようだ。ヒラタクワガタとは近い種だが、雑種ができることはない。
飼育は簡単な種類になるが、♂は交尾をいやがる♀を攻撃することがあるため注意が必要だ。飼育方法はこちら（飼育方法
スジブトヒラタクワガタ）を参考にしてください。
スジブトヒラタクワガタの分布は奄美群島の奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、徳之島。加計呂麻島、与路島、請島は奄美大島のすぐ隣にある属島のような関係の島。奄美大島は沖縄本島、佐渡島に次ぎ、日本の島では３番目に大きな島。周囲約450km、人口約70,000人が暮らす鹿児島県最大の島。徳之島は奄美大島の南にある島で、周囲約90km、人口約28,000人が暮らす島。奄美大島には東京、大阪、鹿児島から航路と空路がある。徳之島には鹿児島と大阪から航路が、鹿児島と奄美大島からは空路もある。行きやすいのは奄美大島で、共通種が多いため奄美大島に行く人がほとんど。徳之島に分布している特産種や特産亜種は少ないため、徳之島に行く人はあまりいない。
奄美大島、徳之島共に、大陸棚周辺部の山岳地帯が水没せずに残った陸地で、大陸と共通する種類が多く分布している。大陸と切り離された時期が早かったためか、特産種や特産亜種も多く生息している。大陸で絶滅したと思われる種類も多く残っていて、東洋のガラパゴスとも言われている。クワガタも特産種や特産亜種も多く生息していて、一度は行ってみたい場所になるだろう。
スジブトヒラタクワガタは世界中でも奄美群島にしか分布していない特産種だ。古いタイプのヒラタクワガタのようで、現在のヒラタクワガタが進入する前から分布していたヒラタクワガタの原種が、離島という特殊な環境で進化したタイプだろう。現在のヒラタクワガタが進入してきたときには種として成立していて、交雑も出来なかったと推定できる。国内でヒラタクワガタが２種類分布しているのは対馬と奄美群島だけだが、チョウセンヒラタクワガタはツシマヒラタクワガタと雑交できるようで、中間的な特徴を持った個体が報告されている。スジブトヒラタクワガタは飼育下でも雑交する事はなく、種として成立したのがかなり古い時代だったらしい。古いタイプの昆虫というと勢力が弱く、個体数が少ないという印象があるが、スジブトヒラタクワガタは奄美群島では最優占種となっている。同じ仲間のアマミヒラタクワガタより個体数は遙かに多く、樹液やトラップには多数の個体が集まる。良く低標高地にはアマミヒラタクワガタが、高標高地にはスジブトヒラタクワガタが多いと紹介されている事が多いが、これは明らかな間違い。発生時期による棲み分けをしていると言った方が良いようで、アマミヒラタクワガタが発生してくる時期になるとスジブトヒラタクワガタの個体数が少なくなる。優占種と言っても小型の個体がほとんどで、50mm以上の個体になると極端に少なくなる。最大の個体は70mm程度になるが、60mm以上の個体は野外ではほとんど見ることが出来ない。♂♀とも艶消しで縦スジが発達した変わったクワガタだが、割と簡単に見られるクワガタなので、奄美大島などに行く機会があったら探してみると良いだろう。
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