トカラコクワガタ
Dorcus rectus kobayashii
本土に分布するコクワガタの亜種で、トカラ列島の中之島、諏訪瀬島、悪石島、臥蛇島に分布する。夏季の活動期には樹液や灯火に飛来するが、本土のコクワガタと比べるとやや個体数は少ない。大顎の形が本土の亜種と違い、体にも艶があることから見分けがつきやすい亜種だ。
活動期間はコクワガタと同様に長めで、初夏から秋まで見られる。トラップをかけると見られる事があるが、灯火にも良く飛来する。幼虫は林内などの朽ち木に入っていて、生態は本土のコクワガタとほとんど同じようだ。
飼育は本土のコクワガタと同様で、飼育下ではコクワガタと同様に産卵数も多いし、飼育は容易だ。飼育方法はこちら（
飼育方法コクワガタ）を参照してください。
トカラ列島は屋久島と奄美大島の間に点在する島々で、口之島から横当島まで162kmという日本一長い村になる。トカラ列島の島は全部で１２あるが、有人島は７島だけで、残りの５島は無人島になる。有人島は定期船があるが、定期船も鹿児島あるいは奄美大島からしか行っていないし、毎日運行しているわけではない。トカラの島に行くには片道最低でも２日必要になる。海は綺麗だし、温泉は各所にある、平家の落人伝説が各所に残るなど魅力がある島々が多い。昆虫採集は禁止されているが、それ以外の目的ならば十分に楽しめる所だ。戦前は三島村を含めた有人１０島をあわせ「じっとうそん」と呼んでいたが、昭和27年の日本復帰後は三島村の三島と分離し、７島だけを「としまむら」と呼ぶようになった。
トカラ列島は、霧島・屋久島火山帯に属しており、中之島の御岳及び諏訪之瀬島の御岳は現在でも噴煙を上げ活動している。また、口之島・中之島・諏訪之瀬島・悪石島・小宝島では温泉が自噴している。口之島から悪石島までの各島は、火山特有の地形であり、周囲は断崖絶壁に覆われ起伏が激しく平坦地が少ない。小宝島・宝島の各島は、珊瑚礁が隆起した島であり、山も低く比較的に平坦地も多い。 トカラの島々は大陸棚周辺部に残った島々の一部で、大陸棚周辺の島々は台湾から八重山諸島、沖縄諸島、奄美群島、トカラ列島、大隅諸島などの島々で構成されている。台湾から奄美群島までは大陸部周辺の山地帯で、水没しなかったため大陸と共通する種類が多く確認されていて生物相は豊富だ。トカラ列島は水没した大陸棚周辺が火山活動により陸地になった島々で、生物相は貧弱だ。また、トカラ列島の悪石島と小宝島の間にはトカラ構造線と言われる生物地理的な境界線があり、悪石島以北と小宝島以南ではまったく分布する生物の種類が異なっている。悪石島以北では分布する生物は、本土のそれとよく似ている種類が多いが、トカラ構造線を越えて小宝島に行くと、沖縄本島に分布するような生物相になる。コクワガタの場合はトカラ構造線以北にコクワガタが分布している。
トカラコクワガタはトカラ列島北部の中之島、諏訪瀬島、悪石島、臥蛇島に分布するクワガタだが、どこから来たクワガタなんだろう。一度水没して生物は全滅したと言われている島々に分布しているが、トカラ列島より南側にコクワガタの分布する地域はない。北側で一番近い島で分布している島は屋久島で、屋久島から南に分布を広げたのだろうか。リュウキュウノコギリクワガタが分布していることから、どこかの島と陸続きになった可能性はあるが、中之島あたりが完全に水没しないで、残った個体群が特化して分布を広げたと考えるのが一般的だろうか。少ない個体数で特化したためか、コクワガタの亜種の中では特徴がはっきりしている。原名亜種と比べると♂♀共に赤褐色〜黒色で、原名亜種に比べ光沢がある。♂の大アゴは細めで、♀の上翅の点刻列ははっきりしない。島によって特徴が少しずつ違うようで、大顎の太さや光沢に違いがある。細身で少し艶があるコクワガタで、夏の活動期に樹液や灯火に飛来する。生態は本土のコクワガタとほとんど同じだが、個体数はあまり多くなく成虫を見かける機会はコクワガタの仲間の中では少ない。
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