アマミノコギリクワガタ
Prosopocoilus dissimilis dissimilis
分布：奄美大島、加計呂麻島、請島
形態：♂♀共に黒色。やや栗色がかかる個体もいる。♂頭盾は細長く先端が２つに割れる。♂は国産ノコギリクワガタでは最大となり、最大級の個体では80mm程度になる。大アゴは強く湾曲し、第一内歯と第二内歯は近接しておりほぼ中間に位置する。♀は上翅に点刻列を持つ。
生態：夜行性で各種の樹液に集まる。発生期は盛夏で、６〜８月には個体数も非常に多く、樹液や灯火で多数の個体が見られる。トラップにも多くの個体が集まる。
幼虫はノコギリクワガタと同様に湿度が高い地中部の朽ち木で見られるが、成虫の個体数から比べると見られる個体数は少ない。新成虫は夏から秋に羽化し、そのまま翌年の初夏まで越冬するが、初夏までに羽化した個体はその年に活動する個体もいるようだ。中型から小型の♂や♀の幼虫期間は１年の個体が多いが、大型の♂個体の幼虫期間は２年になることが多い。 高温と乾燥に注意すれば飼育は簡単で、飼育で大型個体を羽化させることも比較的簡単だ。飼育方法はこちら（
飼育方法リュウキュウノコギリクワガタ）を参考にしてください。
鹿児島から南に約380km、奄美大島は鹿児島県で一番大きな島、国内の島の中でも沖縄本島、佐渡島に続いて３番目に大きな島になる。大きな島だけあって人口は約７万人と多く、観光客も多いため島には航路、空路とアクセスは良い。東洋のガラパゴスと言われるだけあって、アマミノクロウサギ、アマミミヤマクワガタなどの特産種が分布していて生物相は豊富で個体数も多い。大きな島でそれなりの標高のある山もあるためか、原生林に近い自然林もかなり残されていて町に近い森林でも多くの昆虫類を見ることはできる。山はそれなりの標高しかないが、森は深い。
アマミノコギリクワガタは国内に分布するノコギリクワガタの仲間では最も大型になり、海岸線近くの林から、山地帯まで広く分布している。原生林、二次林問わず分布していて、街中の灯火にも良く飛来している。体色は黒一色で、本土のノコギリクワガタを大きく真っ黒にしたような感じ。75mm以上の大型個体は見慣れない大きさのせいか、全く違うクワガタを見ているような感じがする。大顎も大きく発達し、大型♂の湾曲は強い。発生期には個体数は非常に多く、樹液や灯火には多数の個体が集まる。南西諸島のノコギリクワガタは個体数が多い島が多いが、アマミノコギリクワガタは南西諸島の中でも最も発生数が多い。どこでも割と簡単に見られるが、梅雨明け２週間程度が最も個体数が多いようで、良く集まるトラップには非常識なほどの個体数が集まることがある。70mm以上の大型個体は少なくなるが、全体のアベレージは最も大型のノコギリクワガタになる。夜間に活動する個体が多いが、日中活動している個体も良く見かける。
幼虫は立ち枯れ木の地中部や、湿度が多い埋設木などに多く見られる。産卵習性などは本土のノコギリクワガタとほとんど同じ様で、♀は立ち枯れ木の地中部などにもぐって、木質部の近くや木質部をかじって産卵する様だ。幼虫は木質部を食べるが、軟らかい朽ち木だと木質部に穿孔する。堅い朽ち木の場合は土中から木質部を食べている。蛹室は土中に作ることが多く、朽ち木から少し離れた場所に蛹室があることが多い。中型から小型の個体の幼虫期間は１年で、孵化した翌年の初夏から夏に羽化する。羽化した個体は体が固まった後に蛹室を脱出して活動する個体と、越冬後に活動する個体に分かれる。大型個体の幼虫期間は２年で、孵化後翌々年の夏に羽化する。野外では大型個体の場合、羽化した当年に活動する個体は少ないようで、ほとんどの個体は越冬して翌年活動を開始する。
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