大型カナブンの世界

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大型カナブンの分布

 大型のカナブンと言われると、どんな種類を思い浮かべるだろうか。ゴライアスを思い浮かべる方が多いかもしれないが、ここで紹介するのはアフリカ産のメキノリーナ属(Mecynorhuna)のカナブンだ。
 この属のカナブンはオオツノカナブンと呼ばれていて、♂の頭部には角がある。いずれの種も美麗な種で、赤、青、黄色、緑などの体色を持つ。その中でもトルクアータオオツノカナブンの亜種の一つであるウガンデンシスオオツノカナブンは色彩の変化に富み、現れる色彩のバリエーションは非常に多い。
 いずれの種もアフリカの中部に分布していて、同じ地域に数種類のオオツノカナブンが分布している地域もある。分布域が離れている種が多く、分布している地域により幾つかの亜種に分けられている種がある。
 アフリカにはカブトムシやクワガタはアジアやアメリカのように多数が生息しているわけではなく、その代わりにハナムグリ、カナブンの仲間が多数生息している。大型のゴライアスでは100mmを越えるような大型の個体も見られるが、メキノリーナ属のオオツノカナブンは90mm程度が最大になる。
 以前、この属のカナブンはメキノリーナ属(Mecynorhuna)とケロリーナ属(Chelorrhuna)に分けられていた。メキノリーナ属とされていたのはウガンデンシス、トルクアータ、オーベルチュールの3種で、ケロリーナ属はポリフェムス、クラッツ、サバゲの3種だった。その後、この仲間はメキノリーナ属に統一され、ウガンデンシスはトルクアータの亜種になった。そのため、現在メキノリーナ属の種は5種類になる。
 分布する地域はいずれの種もアフリカの中部で、熱帯雨林の分布と一致する。生息地の個体数は少なくないようだ。

メキノリーナ属(Mecynorhuna

 クラッツオオツノカナブン
 オーベルチュールオオツノカナブン
 トルクアータオオツノカナブン
    ウガンダオオツノカナブン
 ポリフェムスオオツノカナブン
 サバゲオオツノカナブン


                    メキノリーナ属分布図

種類別解説



クラッツオオツノカナブン

 アフリカのカメルーン中心に分布している。他の種の分布域と多少ずれていて、より乾燥している環境を好むようだ。黒いボディーに黄色の縦縞模様があり、角はオオツノカナブンの中では最も長く伸びる。
 原名亜種のクラッツと南西カメルーンに分布しているマリアナに分けられているが、見分けがつきにくい。地図を見ると分布を分断している地形がないようなので、連続して分布しているような感じだ。実際に生息地を見ることができないため、本当の所はよく分からない。
 この属の中では最も採集されている個体数が少ない。飼育はやや難しく、孵化率も低い。幼虫の死亡率も高いため、成虫までいく個体は他のオオツノカナブンと比べると少ない。

Mecynorhina kraatzi kraatzi
北西カメルーン・ナイジェリア
Mecynorhina kraatzi marleana  南西カメルーン

オーベルチュールオオツノカナブン

 この属では最も分布域が狭く、タンザニア中心の狭い範囲に分布している。以前は採集しにくい稀種として知られていたが、多産地が発見されてからは、多くの個体が輸入されるようになった。
 体色と黒い斑紋には幾つかのパターンがあり、大きく分けると体色が黄色とオレンジ、斑紋があるものと無いものの組み合わせで4つのパターンがある。輸入された当初は非常に高価だったが、今は入手しやすい価格になっている。飼育もしやすい種のため、この仲間の入門種としてはこの種かトルクアータが良い。

Mecynorhina oberthueri oberthueri タンザニア
Mecynorhina oberthueri kirchneri  タンザニア

トルクアータオオツノカナブン

 大型のカナブンの中でも最も早くから日本に入ってきた種で、インマキュリコリス(Mecynorhina torquata immaculicollis)が最も普通に入手できる。原名亜種のトルクアータ(Mecynorhina torquata torquata)、ザイールに分布する亜種ポッゲ(Mecynorhina torquata poggei)は生体では輸入されたことはないようだ。
 ウガンデンシス(Mecynorhina torquata ugandensis)以外の各亜種は、体の色は緑色の個体が多いが、赤みがかかる個体や、桃色になる個体も見られる。
 分布する地域により下のように4つの亜種に分けられている。

Mecynorhina torquata torquata 赤道ギニア・コートジボアール・ガーナ
Mecynorhina torquata immaculicollis カメルーン・中央アフリカ南部・コンゴ・ガボン・ザイール南西部
Mecynorhina torquata poggei ザイール南東部
Mecynorhina torquata ugandensis ザイール北東部・ウガンダ西部・ルワンダ・ブルンジ

ポリフェムスオオツノカナブン

 緑色のボディーに黄色の斑点があり、角は長く先端で二股に別れ、付け根には2本の角あり合計3本の角がある。国内では早い時期から飼育されてきたので、入手しやすい種だが飼育難度はトルクアータに比べると高い。
 国内で飼育されているのは殆どが亜種のconfluensであり、原名亜種polyphemusはまだ生体で輸入されたことはないようだ。体色は緑色の個体が多いが、赤っぽくなるものも存在する。

Mecynorhina polyphemus polyphemus コートジボアール
Mecynorhina polyphemus confluens  中央アフリカ・ガボン・コンゴ・ザイール南東部

サバゲオオツノカナブン

 角の形はポリフェムスに似るが、体色は緑地に黄色の斑紋となりポリフェムスとは全く違う。上翅の斑紋もポリフェムスとは異なる。この種もあまり強くなく、飼育をしていても幼虫で死亡する個体が多く中々増えない。この種の幼虫は手で触るとダラリとして死んだのではないかと思うことがある。この属の中ではやや小型で、雄の角は先端部まで濃色の繊毛に覆われる。

Mecynorhina savagei
コートジボアール・ガーナ・中央アフリカ・ザイール北部〜東部・ウガンダ、カメルーン